2021.09.27(月)21:57

【1】概要
・東独RFTが1970-80年代に製作したRFTの130mm口径ダブルコーンフルレンジユニット、L2302が内蔵されたブックシェルフまたはスタジオモニターシステム、  Lautsprecherkompaktbox ZIPHONA RFT B 7185の整備済美品ペアです。
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・ユニット、エンクロージャー含めRFTオリジナルです。
・オリジナルサランネット付きですが、こちらの表示はPA2030となっています。これはシステムとして組まれていた場合の型番の様です。
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・L2302はRFT/VEBの13㎝口径フルレンジの傑作であるL2301の性能向上バージョンユニットで、仕様・耐久性の向上が果たされた優秀なユニットです。
・大型マグネット、超軽量ダブルコーンにより構成されています。
・非常に高い強度のエンクロージャーによりS/Nが大変高い澄んだ音がします。
・主観ですが、一般的な130mm口径ユニットとは次元の違う本格的なHi-Fiサウンドと思います。
・音は力強く、大音量でも歪が少なくオールマイティに音楽を再生できるようになっていると思います。
・特に低音の力強さ、歪の少ない高音は特筆されます。
・音楽ソースはボーカルが得意ですが、そのほかJAZZもクラシックもご機嫌に鳴ります。
・RFTのHi-Fiスピーカーシステムには駄作がほとんどなく、どれも素晴らしいと感じています。
・なおRFTのユニットほか製品仕様は下記に詳しく紹介されていますのでご興味がある方がおられましたら参照ください。
 https://www.rft-hifigeraete.de/10320.html
・測定データの解説、新世代グラフィックイコライザーによるレベルアップについても説明いたします。
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【2】システム
・型式:Lautsprecherkompaktbox ZIPHONA RFT B 7185
・ユニット: RFT L2302
・インピーダンス:4オーム
・定格入力:6VA
・最大入力:10VA
・口径:130㎜
・コーン:ダブルコーン、ゴム系エッジ(劣化はほとんどしません)
・状態:コーン、フレーム、マグネットともに大きなダメージはなく、フレームには新品の輝きが残る美品です。
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【3】エンクロージャー
・サイズ:幅=200mm、高さ=267mm、奥行き=200mm
・型式:密閉型、厚い板で強固に制作されています。
・天地、側、裏すべて濃いグレー仕上げですので縦横いずれでも使用可能です。
・サランネット:片側の裏にある固定用ピンが1本折れていますが、それ以外は良好です。銀のラッカーに黒の円形パンチングネットで構成されておりかなり大胆なデザインです。
・着脱可能です。
・入力端子:2Pのハーモニカ端子を新設しましたのでスピーカーケーブルを簡単に、かつ確実に接続できます。
・状態:ヴィンテージ品ですので小さな傷、剥がれはありますのでご承知おきください。
・レストア:内部清掃、ユニット清掃・入力端子の新設、外装清掃などの整備を行いました。
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【4】音質
・EL34プッシュプル真空管アンプ(10W)で試聴しました。
・以下は主観ですのでご承知おきください。
・かなりパワーを入れても音形は崩れません。
・さすが、スタジオモニターに採用されるほどの高信頼性ユニットです。
・能率は高いので小出力の真空管アンプでものびのび鳴ります。
・音声帯域が特に充実している感じで生生しいです。
・小型ですが、チャーリーヘイデン、レイブラウンなどの太く良く伸びる低音を見事に再生します。
・マーラー、ストラビンスキーなどの大編成によるオーケストラもきれいに分離した音で聴くことができました。
・高音はかなり高いところまで伸びていますので、アコースティックな音楽全般を透明感あふれる音で再生していると思います。
・点音源ですので位相特性が良く、大編成のオーケストラの再生においても、楽器の分離が良く、かつ奥行が良く出ます。

【5】測定データ
・出品システムの測定データを画像9に示します。
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・海外のビンテージシステム、ユニットの状態・性能は大きなばらつきがありますので、しっかりとした測定データによる確認が安心です。
・輸入したものの3~4割は不良品と言っても過言ではないのが実情です。
・画像をクリックすると大きくなります。

[測定環境説明]
・スピーカー~マイク位置:1.1メートル
・左右個別、および両方同時に同じスィープ信号を入力して測定
・スィープ:20~20000Hz
・赤い線が周波数強度分布です。
・横軸は対数軸で、100Hz、 1KHz、10KHzの目盛表示があります。

[特性の感想]
・左右の特性、能率はよく揃っています。
・アバレはありますが55~15000Hzの帯域を再生可能と読めます。
・13cm口径ユニットとしてはかなりの広帯域再生と思います。
・強固な完全密閉箱ですので、レベルは徐々に低下するものの50Hz付近からしっかり再生されています。
・全体的に素直な特性で、音声ソース、1950-60年代のJAZZやPOPSの再生は得意そうな感じです。
・低域、高域が素直に減衰しているので自然な再生が期待できます。

【6】グラフィックイコライザー(GE)による整音について:
・新たに低価格(GE、入力セレクター、ケーブル、端子、測定作業込みで2~3万円)の支援サービスを開始しました。
・出品のシステムのままでも全く問題ありませんが、再生周波数の平坦化と部屋の特性を考慮した改善が可能です。
・近年高性能の新世代GEが低コストで入手可能になりましたできるので、導入をご検討ください。ご支援いたします。
・下図は15バンドステレオ仕様のGEを使用して調整した測定結果とその時のGEの設定です。
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・50~150Hz帯域のレベルを少し上げ、超高音域のピークを抑えるように設定しました。
・この結果、50~15000Hzがかなり平坦になりました。
・モニターシステムとしても使えそうな高性能な特性です。
・実際に音を聴いてみても、現代のスピーカーと再生帯域は遜色ないにもかかわらず、音は高能率で生生しいというビンテージスピーカーの特長を発揮しています。
・この様に従来、実現できなかったことが簡単に出来るようになり、オーディオライフが楽しくなります。

【7】企業紹介
・L2302ユニットにはRFT、VEBが併記されていますので、当時の複雑なドイツの状況を含めこれらの関連を説明します。
・第2次世界大戦後ドイツは東西に分割されました。
・東ドイツにおけるラジオやカセットレコーダー、ステレオやテレビなどの電化製品は、通常「ラジオ電信テクノロジー人民公社(VEB FUNKWERK)」で作られていました。
・これらの商品は最低限の生活必需品であるとは政治的には見なされておらず、贅沢品に見あう価格で、製品も西ドイツに劣らない、素晴らしいデザイン、品質のものが多く存在しました。
・RFTは、戦後、東側に残ったテレフンケンやシーメンスなどの音響機器メーカーの設備やエンジニアたちを集め、VEB FUNKWERKを中心に多くの組織を1つの国営企業集合体として統合された協会名称です。
・RFTはBroadcasting and Telecommunication Technologyの略称で、ドイツ民主共和国(GDR)におけるさまざまな通信会社の製造業者協会の名前です。
・会社の名前ではありませんので誤用に注意が必要です。
・従いまして、出品のユニットは、VEBが制作しRFT協会で販売したもの、ということになります。
・RFTでは多くの優秀な技術者たちのノウハウを生かして、数多くのスピーカー、オーディオ機器が設計・制作されてきました。