2021.09.18(土)13:54

【1】概要
・1950年代に製作されたSiemensの可搬型トーキーシステムに採用されていた18cm口径フルレンジP18良品のペアが天然木パイン集成材によるバスレフエンクロージャーにセットされたシステムのペアです。
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・出品のP18はムービーの音声などのサウンドトラック再生、ミュージックなどのコンサートで使用されていたもので音は抜群に優れていると思います。
・超軽量フィックスドエッジコーン、馬蹄形アルニコマグネットなど多くの技術的特徴を有しており、この時代のフルレンジとしては出色の再生可能帯域、高能率を達成している傑作です。
・このユニットに対して十分な容積を確保したエンクロージャーにより低音が余裕をもって出てきます。
・音を聴くと古さは全く感じられず、シングルフルレンジから素晴らしい音楽が流れてきて驚きます。
・ストレスのない設計、マグネットなどへの物量投入が功を奏し、JAZZ, クラシックを問わず満足度の高い再生音が得られます。
・能率は高いので中小出力の真空管アンプでもガンガン鳴ります。
・典型的ジャーマンビンテージの音をぜひ体験してみてください。
・同構成のシステムを購入いただいたKさんの感想を転記します。
Kさん「大型の英国製のスピーカーをメインにしていましたが、音の切れ、定位の良さ、全体のバランスなどこちらのシステムがすべて上です。メインがこれに置き変わりました。特に声楽、弦は圧倒的な再生音で驚きました」
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【2】システム
・型式:Siemens P18、製造はIsophon
・口径:18㎝
・コーン有効直径:17.0㎝
・マグネット:馬蹄形アルニコ
・コーン:超軽量フィックスドエッジ
・取り付け:Siemens製品に多く見られますようにこのユニットには本体に取付穴がありませんので汎用の固定金具を使用しています。
・音圧、音質は左右揃っています。
・インピーダンス:4オーム、実測DCRは2本とも3.5Ωでピタリ揃っています。
・状態:良好。大きなダメージは見当たりません。特にコーンは良好です。
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【3】エンクロージャー
・サイズ:幅256mm、高さ366mm、奥行220mm
・型式:バスレフ
・材質:天地側面は15mm厚のムク上級グレードパインの集成材、バッフルと裏板は12mm厚のMDFです。
・パイン集成材は節(ふし)の無い良品です。
・外装:120、240番のサンドペーパーで研磨し、次にワトコのナチュラルオイルと600番のサンドペーパーで繰り返し研磨し仕上げています。
・前面ネット:ロイヤルブルーのジャージ布によるサランネットが付属します。
・入力端子:2Pの圧着方式端子でスピーカーケーブルを簡単に、かつ確実に接続できます。
・吸音材:裏板に音響用フェルトを設置しています。
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【4】音質
・以下は主観ですのでご承知おきください。
・EL34 プッシュプル、出力10Wの無帰還アンプで試聴しました。
・能率が高いので12畳程度の部屋でも十分な音量が得られます。
・「ヘレンメリルウィズクリフォードブラウン」をまず聴きました。
・ボーカル、トランペットが生生しく鳴り、大きな満足感が得られました。
・音声帯域の再生には特に魅力を発揮していると思います。
・次にマイルスデイビスのCBS録音「カインドオブブルー」とブルーノート録音「サムシンエルス」(キャノンボール名義ですが実際はマイルスがリーダー)を試聴しました。
・同じリーダーのバンドでもレーベルが違うとかなり異なる音になるのが興味深いです。
・両方とも音、演奏ともも素晴らしく、JAZZの大名盤であることが良くわかります。
・CBS版では非常に新しい感覚の音と演奏が静寂から立ち上がってきます。
・ビルエバンスのピアノ、コルトレーンのサックスが研ぎ澄まされた音で見事に再生されます。
・ブルーノート版では、なんといっても「枯葉」におけるマイルスのミュートトランペットが「これぞJAZZ!」という緊張感あふれるシャープな音で再生されます。
・ソロ楽器の音がよく前に出てくるシステムと思います。
・クラシックの「モーツァルト:ピアノ協奏曲集(第12~14番、室内楽編成版)ゴットリーフ・ヴァリッシュ(Vn)ピアッティ弦楽四重奏団」、「マーラー:交響曲第10番エリアフ・インバル指揮東京都交響楽団」を試聴しました。
・中高音が強力なコーン型ですので、弦楽器のボーイングも音が柔らかくかつ膨らまず安定して出てきますので安心して音楽を聴くことができると思います。
・アコースティックな音楽全般を透明感あふれる音で再生していると思います。
・点音源ですので位相特性が良く、大編成のオーケストラの再生においても、楽器の分離が良く、かつ奥行が良く出ます。
・最近の打ち込み、ラップなど超低音成分が入っている音楽ソースは苦手です。
・この種の音楽を聴く場合は35Hz以下をチャンデバ、グライコなどでカットしてお楽しみください。
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【測定結果】
・測定データ開示のご要望が複数ございますので、今後できるだけ周波数特性図などを開示していきたいと思います。
・測定済のシステムであれば安心かもしれないですね。
・出品システムの測定データを下記に示します。
・画像をクリックすると拡大され見やすくなります。
スライド5

スライド6
【測定環境説明】
・スピーカー~マイク位置:1.1メートル
・左右個別に同じスィープ信号で測定
・測定システム:WebSpectra V1.51(最新)
・スィープ:20~20000Hz
・赤い線が周波数強度分布です。
・線が細いので画像を拡大すると確認しやすくなります。
・横軸は対数軸で、100Hz, 1KHz,10KHzのメモリ表示があります。
・35Hz以下は暗騒音などですので、特殊なサブウーハー付きの場合を除き表示をカットしています。

【特性の感想】
・できるだけ客観的に解説したいと思いますが、一部主観が入ります。
・ご容赦ください。
・左右の特性、能率はよく揃っています。
・アバレはありますが65~15000Hzの帯域を再生可能と読めます。
・レベルは低いですが60Hzくらいからしっかり反応しています。
・全体的に素直なかまぼこ型特性で、音声ソース、1950-60年代のJAZZやPOPSの再生は得意そうな感じです。
・低域、高域が素直に減衰しているので自然な再生が期待できます。


【聴力の点検について】
・余計なお世話と叱られてしまうこともありますが、重要なことですので記載させてください。
・高齢になるに従い、聴力は劣化します。
・特に高音側が聞こえなくなります。
・そうするとかなりハイ上がりのスピーカーが好まれるようになり、スピーカーシステムのバランスは崩れることになります。
・先日も「片側の高音が出なくなった」とのことで、近くの高齢の方でしたので調査に行きましたら、原因はシステムの問題ではなくリスナーの方の聴力劣化でした。
・私の耳特性は良い方(^^)(20歳位の感度、実年齢は68歳)ですが、それでも実際に聞こえるのは12000Hzまでです。
・耳能力測定は下記YouTubeで簡単に確認できます。
https://www.youtube.com/watch?v=kXLf7hVl4_c
・必ずヘッドホンを使用してください。
・パソコンやスマホのスピーカーでは最低音、超高音領域ほとんど再生不可能ですので。
・左右の能力の劣化度合いが違いますとステレオの音もゆがみますので、ぜひ測定してみてください。
・この場合の補正はデジタルグラフィックイコライザー(最近高性能機が安価で入手できます)で比較的簡単にできます。