2.3 Isophon
(1)企業概要
1900年代の中盤に大活躍した電気部品とスピーカーのドイツの製造企業です。 1955年時点において、Isophonはヨーロッパで最大かつ最も技術的に革新的なスピーカーメーカーでした。Telefunken、Siemens、Loewe、Graetz、Saba、Lorentzなどの主要音響機器メーカーにユニットをOEMとして数多く納品しておりました。
1929年、Isophon E. Fritz&Co. GmbHは、ベルリンのフランクフルターアリー56にヘルマンランメル、エヴァルトフリッツ、ウィリーショーングスによって回転コンデンサを製造する会社として設立されました。その後拡大する無線機器業界にとって重要なコンポーネントサプライヤーとしての地位を確立しました。
第二次世界大戦で元の製造施設が破壊された後、1945年からはベルリンテンペルホーフで生産を続けました。幅広い製品群には、家庭用および商業目的、たとえば駅ホール、サッカースタジアム、映画館、デパート、路面電車の音響補強用のスピーカーが含まれていました。1945年~ 1979年の期間で、Isophonは7000万台を超えるスピーカーユニット、システムを生産しました。おそらく世界一の生産実績と思われます。
1980年代にボッシュ/ブラウプンクトグループに売却されました。イソフォンという名前の権利はドレーゲル家に残りました。
1997年から2012年にかけて、スピーカーラインはAcoustic Consulting GbRによってIsophonというブランド名で製造され、所有者のRoland Gauderが将来的にGauder Akustikという名前でスピーカーを販売することを決定し現在に至っています。以上は下記などから引用、独自に編集しました。
https://de.wikipedia.org/wiki/Isophon
(2)オーディオ製品の紹介と音について
写真は、1958年頃に製作されたP1826です。
Telefunken、Siemens、Imperial、Graetzなどのコンソール、ラジオに同型のユニットが数多く見られます。Isophonのユニットの種類は多すぎて「これはIsophon製造」と断定するのが難しいのですが、1950~70年のIsophon 黄金期のHi-Fi用ユニットは、外観からして自信に満ち溢れており、長い間使用してきた私の目からは「アッ、これはIsophon 」とすぐに分かる気がするのです。
特徴としては馬蹄形のアルニコマグネットにおける濃紺または赤に塗られたマグネットヨーク、シルバーに塗られた特徴あるシャーシ、超軽量フィックスドエッジのコーンなどのイメージがあります。もちろんその他の仕様のものも多くあります。
また音を聴くとある程度分かる気もします。極論すると1950~70年代のドイツ、および欧州システムの音はほぼIsophonがベースになっているといえるかもしれません。OEMで納品されたユニットを受け取ったスピーカーメーカーは各社の特色に仕上げバラエティに富んだ製品を作り出していったのではないか、と考えています。
写真は、15cm×21cm口径のP1521とそれを使用して当方で開発した小型システムです。
このユニットも重要で、ドイツにおける中型楕円システムの原点になったものの一つと言えます。構造はほぼP1826と同じですがコーンサイズが小さくなったことにより高音域の再生能力が向上しました。この結果シングルユニットを比較的狭い部屋、または近接で聴くときには全体のバランスが良いものになっています。
低音はリスナーがユニットに近接するほど後面からの回り込みによる減衰が小さくなりますので低音が充実します。例えばユニットをそのままの状態で、手で持って耳から10cmくらいの距離で音を聴くと低音がしっかり出ているかどうかが分かります。単体の音の良さを判断するにはユニットだけで音を聴いてみるのがベストです。このサイズの同系ユニットはTelefunken、Grundig、Loewe Optaにも多数存在し良い音を聴かせてくれます。
次に真円形のユニットを紹介します。写真は1940年代後半に発売されていたSiemensのラジオ、コンソールに使用されていた21cm口径のユニットで、製造はIsophonです。
非常に大きな馬蹄形アルニコマグネット、強度が大きな鋼鉄製のフレーム、軽量フィックスドのコーンなどが実現されています。
ライントランスをスキップして現代のアンプで鳴らすと実に質の高い再生を行います。いまから70年前に製作されたユニットですが、驚くべき性能と言わざるをえません。このあたりがIsophonユニットの原点かもしれません。
写真は1953年のSiemensの大型コンソールに使用されていた21cm口径のフルレンジユニットです。
ほとんどすべての要素が後のIsophonの主力ユニットそのものであることが分かります。センターキャップの後ろにはアルミと思われる高音用のサブ振動板が組み込まれていて疑似的な2Way動作をしているようです。当時から桁外れの技術力があったことが良くわかります。
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